結婚して何十年も経つと、家事のやり方や担当もすっかり固定されている——そんなご家庭も多いかもしれません。
でも、二人暮らしになってから感じるのは、「少し分け合うだけで、ずっと気持ちが軽くなる」ということ。
今回は、わたしたち夫婦がたどり着いた「家事を分担して気持ちよく暮らすコツ」をご紹介します。
「得意なことを任せる」から始める

家事の分担というと、きっちり線を引くようなイメージがありますが、わたしたちは最初から“ゆるく”始めました。
お互いが自然にできることを担当する——それだけです。
夫は几帳面で手先が器用。だから、掃除や修理、道具の手入れは夫の担当。
私は料理や洗濯が好きなので、そのあたりを引き受けます。
「自分がやったほうが早い」という考えを少し手放してみると、思いのほか気持ちが楽になりました。
完璧を求めず、「お互いにできる範囲で助け合う」。
それが続けるコツなのかもしれません。
「ありがとう」を言葉にする
家事を“手伝う”ではなく、“一緒にやっている”という意識を持つこと。
これがとても大切だと感じます。
夫が掃除機をかけてくれたあとには、「ありがとう、助かった」と一言伝える。
私が洗濯物を干したあとに、夫が「いい天気で乾きそうだね」と声をかけてくれる。
それだけで、家の中の空気がやわらかくなります。
「言わなくてもわかるだろう」と思っていた頃もありましたが、
やっぱり言葉にすることで気持ちが伝わるのだと、今になって実感します。
“相手のやり方”を尊重する

家事の分担を続けるうえで一番大切なのは、やり方の違いを受け入れること。
たとえば、夫が掃除をしてくれるとき。
私から見ると「そこ、まだホコリが残ってる」と思うこともあります。
でも、それを指摘するのではなく、「ありがとう、きれいになったね」と言うようにしています。
すると夫も、「今度はここもやってみよう」と自分から工夫してくれるのです。
逆に、私の料理に夫が口を出さないようにしてくれるのもありがたいこと。
「やり方の違い=個性」と思えば、イライラも減ります。
家事を“イベント化”してみる
ときには、家事を一緒にやることを「イベント」にしてしまうのも楽しいです。
たとえば、週末の朝に「今日はキッチン大掃除デー!」と決めて、
夫が換気扇を掃除、私は棚を整理。
終わったら、「お疲れさま」とコーヒーを淹れてひと休み。
それだけで、家事がちょっとした共同作業のように感じられます。
一人で黙々とやるよりも、「一緒に片づけたね」という満足感が残ります。
それが夫婦の会話の種にもなり、暮らしのリズムにもなります。
「やってくれない」より「どうすれば楽か」を考える
以前は「どうして手伝ってくれないの?」とつい思ってしまうことがありました。
でも、相手を責めても気まずくなるだけ。
それよりも、「どうすればお互いに楽に続けられるか」を考えるようにしました。
たとえば、洗濯物を畳むのが面倒なら、畳まなくても使いやすい収納に変えてみる。
掃除が負担なら、コードレス掃除機を買ってみる。
家事の“形”を変えるだけで、分担のバランスも自然と整っていきます。
「やらせる」ではなく、「一緒に暮らしやすくする」視点に立つと、空気がまるくなります。
「お願い上手」になることも大切

家事をお願いするときは、言い方ひとつで印象が変わります。
「これやって!」ではなく、「お願いできる?」
「手が空いたら、ここ見てくれる?」
そんなふうに、柔らかく頼むのがコツです。
夫も「頼られてる」と感じると、自然と動いてくれます。
そして、やってくれたあとは「助かった、ありがとう」と笑顔で伝える。
小さなやり取りの積み重ねが、信頼につながっていくのだと思います。
“分担”は変化していくもの
体力や気力、生活リズムは年を重ねるごとに変わっていきます。
だから、家事分担も固定せず、時々見直すようにしています。
「最近、掃除が大変になってきたから、代わりにゴミ出しお願いできる?」
「料理は私がやるから、食後の片づけをお願いね」
そんなふうに、無理のない範囲で柔軟に変えること。
“完璧な分担”より、“続けられる分担”が大事です。
夫婦でつくる「心地いい家」
家事分担の目的は、「公平さ」ではなく「心地よさ」。
お互いに気持ちよく過ごせる空間をつくることが、一番のゴールだと思います。
家の中が整っていると、気持ちも穏やかになります。
そして、その穏やかさが、また次のやる気を生む。
そうして回っていく“暮らしの循環”が、今のわたしたちの支えです。
おわりに
家事を分担するというのは、実は「仕事の分け合い」ではなく、
「お互いの暮らしを支え合う」ことなのだと思います。
完璧じゃなくてもいい。
お互いのペースを尊重しながら、笑顔で過ごせることが一番。
今日もまた、夫が掃除機をかける音がリビングに響いている。
その音を聞きながら、私はキッチンでコーヒーを淹れる。
そんな何気ない朝の風景が、なによりの幸せです。

