結婚したばかりのころの料理には、
慣れなさと一生懸命さが混ざっていました。
味つけを間違えたり、火加減を迷ったり。
それでも「おいしいね」と笑い合えた時間は、
今でも鮮やかに思い出されます。
年月を重ねたいま、
あの頃の味をもう一度作ってみたくなる——
それは、懐かしい記憶を“今の暮らし”で温めるような楽しみです。
最初の食卓を思い出す
思い出の味を再現するとき、
まず心に浮かぶのは“最初の食卓の風景”です。
料理の腕よりも、
「一緒に食べられること」がうれしかったあの頃。
●少し焦げたハンバーグ
●味が濃すぎた煮物
●盛りつけがぎこちないお弁当
どれも完璧ではなかったけれど、
“作ること”そのものが愛情のかたちでした。
その気持ちを思い出すだけでも、
料理がやさしくなる気がします。
レシピノートをひらく時間
昔のレシピノートや切り抜きを見返すと、
当時の工夫や努力が詰まっています。
「おいしくできた！」「次は少し塩を減らす」など、
書き込まれた小さなメモを見ると、
あの頃の自分と今の自分がつながるような気持ちになります。
再現するというより、
その頃の“気持ち”をもう一度味わう時間。
それがこのシリーズの一番の楽しみです。
“同じレシピ”を“今の味”に変える
若い頃に作っていた料理を、
今の体に合わせて“やさしい味”にアレンジしてみましょう。
●揚げ物をオーブン調理で軽く仕上げる
●塩分を少し控えて素材の味を生かす
●ボリュームより“ほどよい満足”を大切に
「同じレシピなのに、今の自分たちらしい味」になる。
それは、長く一緒に暮らしてきた二人だからこその変化です。
懐かしい味が語りを生む
昔の料理を再現すると、自然と会話が弾みます。
「この味、懐かしいね」
「最初のころ、こればかり作ってたよね」
記憶の中の味は、会話のきっかけにもなります。
そのやりとりこそが、
今の二人にとっての“思い出の更新”なのかもしれません。
味を通して語る時間は、
写真よりも心に残る“暮らしのアルバム”になります。
小さな工夫で“思い出ごはん”を今風に
昔の料理をそのまま作るのもいいけれど、
少しだけ“今の暮らしに合う工夫”を加えてみましょう。
●二人分サイズの小さな鍋で煮物を
●ごはんを少なめにして旬の野菜を多めに
●昔の味付けを、だしや香味野菜で軽やかに
味を変えるのではなく、
“暮らしに合わせて整える”こと。
それが、今の再現料理のちょうどいい形です。
「あの頃の気持ち」をもう一度台所に
当時は毎日の料理に試行錯誤していたけれど、
いま振り返ると、それも愛しい思い出です。
「少し失敗してもいい」
「味見をしながら作れば大丈夫」
そんな初心を思い出すことで、
料理がまた新鮮に感じられます。
大人になった今だからこそ、
“初心の味”を作る時間は特別です。
おわりに：味は、時間を超えて寄り添う
料理は、時間を超えて心をつなぐもの。
結婚当初の料理をもう一度作ることは、
思い出を懐かしむだけでなく、
「今の二人のかたち」を確かめる時間でもあります。
懐かしい味を囲みながら、
「これからも一緒に食べていこうね」と言えること。
それが、いちばんあたたかい“ごちそう”です。
今日の一皿が、
あの頃の笑顔と、今の幸せをつないでくれますように。
